海山Koujirou

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- レシピ紹介 -

第十回 おとと蒸し

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 元来日本という国は海に囲まれており、水産資源には非常に恵まれた国です。残念ながら乱獲が進みその漁獲高は大幅に減少したとは言え、今でも近海では僅かばかりではありますが食材として非常に優秀な魚介類が水揚げされている様です。そこへもってきて細長な島国である為に海に近い土地が多く、古来より魚介類を生で食べる今日いわゆる処の「お刺身」という料理が発達し、定着したのだと思われます。
 この食文化は今や世界の先進各国より注目を浴び、その技術の洗練は日本人の繊細な感性と深い探求心を物語る物で世界に誇れる文化と言えましょう。
 前置きが長くなりましたが皆様の中にも「刺身は大好き」という方が大勢いらっしゃる事でしょう。当然ご家庭の食卓にもお刺身が登場する事が少なくないと思います。ところでそのお刺身が残った時はどうしておいででしょうか。
・その日のうちに「づけ」にしておいて明くる日に海鮮丼で・・・なるほど。
・明くる朝のお味噌汁の具に・・・美味しそう!!
・オリーブオイルに漬けておいて生野菜と供にカルパッチョ風に・・・ご相伴にあずかりたい!!

 皆様色々と工夫をしてみえる様ですが、私の提案致しますこんな料理はいかがでしょう。 「おとと蒸し」
 15~16年程前に中華料理の解説者からヒントを得、少し和風にアレンジして私が銘々した料理です。豆腐と魚の蒸し物ですのでお豆腐の「おと」と魚の別称の「とと」をくっつけて「おとと蒸し」としました。非常に簡単な料理で味付けの醤油の量だけを注意して頂けばまず失敗のない料理です。
 まず豆腐を軽く水切りします。豆腐はこの料理には木綿が合うと思いますが、他に絹ごし、ソフトとありますので皆様それぞれ普段お使いのお好みのものをご利用になればよろしいかと思います。15~20分位水切りします。

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 水切りしているその間に具を用意します。具とはつまり刺身の残り物で鮪、烏賊、甘海老、貝類、白身、何でも結構です。それを細切りにする訳ですが烏賊は元々細いでしょうからその中でも太ければ半分位にして下さい。それから鮪など他の具も大体刺身一切れを3~5等分位にすれば良い訳で、そうして刻んだものをボールに入れて葱の微塵切り、生姜の微塵切り、大葉紫草、茗荷(みょうが)も微塵切り、そして胡麻は切り胡麻(まな板にのせて包丁で切る)等お好みの薬味を入れ、酒少々と醤油を入れてよく混ぜ合わせます。この時の醤油の量の目安ですが豆腐全体の量を見てその豆腐を奴ででも食べる時の量の醤油をイメージして入れますと丁度良い位になるのではないでしょうか。水切りして抜けた水分の分はお刺身が余分に入りますので調整がついて上手くいくと思います。

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 そうしましたら蒸し器に湯を沸かしていよいよ蒸す訳ですが、湯の量がある程度入る蒸し器でなくては上手くいかないと思います。どうしても蒸し器のない方は電子レンジをご利用下さい。と申しますか、ご家庭であればどうぞ皆様電子レンジをご利用になって下さい。この料理につきましては「蒸し器に電子レンジが数段劣る」等という事はないと思いますので、それ程問題ないと思います。

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 まず具合のよい器を用意して(鉢状の道具が良いでしょう)、水切りした豆腐をよくつぶします(フードカッターを使用するかよく洗った手でもみつぶして下さい)。細かく滑らかに潰れたら、器の内回りにドーナツ状の様な型に入れ、その中心に先の魚の具を詰め入れ、全体の表面を滑らかに整えます。そうしたらその器にラップを被せ電子レンジで豆腐半丁分なら6~7分位、蒸し器なら強火で13~15分加熱して下さい(器の形態や厚み、又火力(ガス)の差で時間はあくまで目安として考えて下さい)。火が通ったかどうかは竹串で中心の部分を差してみて数秒おいて抜いたらすぐに唇のすぐ下にそっと当ててみて熱いと思ったらOK。ぬるい様ならもう少し加熱して下さい。

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 そうして蒸し上がったら、木の板の様な鍋敷きの様な物か、耐熱の皿等に蒸した鉢を乗せ、上にもみ海苔(焼きのりをよく乾いた日本手拭い等で包んで揉んで千切った物)と浅葱(あさつき)の小口切りをパラパラとふりかけて出来上がりです。是非熱々で召し上がって頂きたいので下ごしらえだけしておいて食べる時に加熱して下さい。良い香りが立ち昇って食欲をそそります。

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 食卓にお出ししたらレンゲか本しゃもじ等で全体に良く掻き混ぜて銘々の取り鉢によそってお召し上がり下さい。
 因みにご飯を「よそう」とか味噌汁を「よそう」とか申しますが、その語源は「よそおう」でつまり「装う」からきています。つまり「衣服を着る」のではなく、「おしゃれに装う」という様な心でご飯にしても味噌汁にしてもまたこの「おとと蒸し」にしてもよそって下さい。
 こうして取り分けますと料理した者も料理してもらった者も美味しそうに見えるだけでなく何か大切な物をこしらえたんだという気持ちになり、大切な物をこしらえてもらったという気持ちになるのではないでしょうか。
 命を繋ぐ食べ物、大切にしたいと思います。

 最後になりましたが、おおよその分量目安を記します。(4人分目安で)
  ※写真の分量は2人分です
○豆腐・・・1丁
○魚肉・・・100g~120g
○白葱・・・1/2本
○茗荷(みょうが)・・・1/2本
○黒胡麻・・・一つまみ
○生姜・・・小指の先分位
○大葉紫草・・・1~2枚
○酒・・・盃1杯弱
○醤油・・・豆腐1丁を奴で食べる位

 刺身の残り(魚肉)は少なければ何か加熱用の切り身の鮮度が良くて冷凍でない物を少し買ってきて足し入れても良いでしょう。
 醤油の量は最初は少し控えめにして(あまり極端に控えると不味い物になります)、足りない分は後で少し醤油か塩をかける位で考えた方が失敗がないと思います。
 もしも万が一しょっぱすぎた場合は新鮮な卵があれば溶き入れるとか豆腐を継ぎ足すとかどちらにしてもあまり良い方法ではなく、最初はやっぱり少し控えめにしてその時の量を目安に次回から好みの味になる様に調整して下さい。
また魚の旨味が足りなくて物足りない様なら上質(できるだけ)の鰹節をかけて混ぜてみて下さい、びっくりするほど味が変わります。
 皆様の成功をお祈りします。

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