海山Koujirou

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- レシピ紹介 -

第十六回 イカの塩辛

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 お料理自慢の方はよくご家庭でも手作りの塩辛をこしらえていらっしゃるようで、当店のカウンターでも時々塩辛談義に花が咲きます。皆様それぞれに色々と工夫をされていて面白く興味を覚えて拝聴させていただいております。お客様が上手な塩辛が造れるようになりますとその作業がとても楽しみになるようで、私もそのお話しぶりを聞いておりますと楽しくなります。
 新鮮なするめいかの良いのを見つけると大喜びですぐさま購入して帰り、早速塩辛造りに取り掛かります。出来上がりのタイミングを見計らって味を見ては、「もうすこしかな・・・、いやこの位がちょうど良い。」と大きく頷いて納得しきり。こうして出来上がったものを何時も心待ちにしてくれる友人が何人かいて、そのうちの一人に電話をかけてお宝の完成を告げると、「ちょうど良かった!」友人の普段より1トーン高い声に少々驚いて何がちょうど良いのかと思っていると続けて「カマスの開いたのが今乾し上がって取り込んだところだ。君に電話をかけるつもりだった。」などと何とも絶妙のタイミングである。こういうのを気が合うというのだろう。(干物に塩辛、今夜は酒だな!!) 心で叫んであわただしく風呂に入り右手に塩辛、左手にとっておきの純米酒を握りしめて、いざ友人宅へ・・・。 私の空想です。
 いずれにしましても塩辛をご家庭で造られることは非常に好ましいことだと思います。塩加減の調整も家族に合わせてできますし、墨をまぜて「黒造り」、糀を入れて「甘みの利いた本格塩辛」に、などなど色々な楽しみ方もできて食生活を豊かにする助けになることでしょう。未だ経験のない方は是非お試しいただきたいと思います。

 使用しますいかは「するめいか」です。北海道、青森方面が有名なようですが、何処でも捕れるいかです。その胴中に入っているワタとかゴロとか呼ばれる肝臓が、鮮度落ちが早いので品質の良否の見極めが大切になってきます。材料を選ぶポイントは、まず表面の色艶を見てください。透明感が大切です。色はほんのりと黄金色を帯びていて赤みがかった褐色がベストです。茶色も悪くありません。白いのは要注意です。が、稀に他のいかと接触した部分だけ白くて他は茶色のものがあります。この白色は艶々と透明感があり、区別できます。これは問題ありません。だらしなく全体的に白くなったものは絶対に避けてください。なお、塩辛造りに適した時期は10月~3月くらいでしょうか。
 型は中膨れで張りのあるものがワタが太っていて美味しいと思います。すっとスマートで表面が堅い感じのするものは身も甘みが無くて妙に堅い感じでおいしくありません。
 以上のことを踏まえましていかを選別し良品を一度に2~3杯位買ってきて造ると良いと思います。そのくらいの量のほうが造り易いと思います。買って家まで時間がかかりそうなら、魚屋さんに氷を少しもらい新聞紙などでいかに直接触らないように工夫して冷やしながらもって帰ってください。帰宅したら直ちに取り掛かってください。

 まず、流し(シンク)の中でいかを取り出して下足(ゲソ)の付け根あたりから胴中に指を差し入れて胴の内側周りと下足の一部とをつないでいるところをはずしてください。完全にはずれたのを確認してから今度はいかの耳と呼ばれる部分を左手でしっかりと持ち下足をワタごとそーっとゆっくり力強く引き抜きます。この時ワタを破らないように”ゆっくり力強く”やるのがコツです。

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 それからワタに張り付いている黒い墨袋を指先でつまんで引っ張りはがしてこれはすぐにゴミ箱などに捨ててください。うっかり潰してしまいますとそこら中が墨だらけの真っ黒になってしまいます。(もしいかすみパスタや、黒造りなどで利用する場合は容器に入れておいて下さい。)後はワタ以外の異物をワタを破らぬように注意して取り外しさっと水で洗ってから綺麗な布巾で水気を除き包丁で下足を切り離します。その後ワタを包丁で縦に切り開き、平らな盆ざるか何か、水分が切れるような物の上に乗せて上から塩をします。この塩はワタの中の余分な水分(臭みの元となります)を抜き出すための塩である程度量をふりかけないと効果がありません。ザルに乗せるのはこの水分をワタから遠ざけて浸ったような状態を避けるためです。これを下に何か敷いて冷蔵庫に入れて2時間ほど置いてください。ラップ等はかけないでください。

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 そうしたら身と下足を掃除します。身は耳の部分を手で引き離し、耳と接続していた部分に添って縦にまっすぐ包丁で切り込みを入れます。1枚の三角状の身になったら軟骨や内臓物を手ではずし、まな板の上で皮と身の間に指先を入れて皮を少しづつはがして身から皮をはぎ取ります。この皮は捨てていただいて結構です。

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 耳の部分は隅のほうに皮1枚残して切り込みを入れてそれを手がかりにして皮をむきます。耳は両面皮をむきますので裏返してもう一度同じことをしてください。上身の方の内側はうすい膜のような皮が残っているので包丁で切り取りながらきれいにしてください。

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 以上の作業で掃除が済んだらきれいな布巾で水分をよくふき取ってさらし等に我々は巻きますが、普通ご家庭ではキッチンペーパーで代用してください。この作業も余分な水分を抜くためのものです。こうして冷蔵庫にしばらくおきます。
 ゲソはいかのイラスト等では口になっている部分のところから包丁で切り込み、眼球を潰さぬように左右に切り開きます。口と眼球を指で取りはずし眼球は捨ててください。口はそのまま堅く干し上げますと地方のみやげ物屋で稀に見かける”カラスグチ”とか”トビグチ”とか呼ばれる一杯飲み屋のおつまみのようになるでしょう。この口の堅く茶色い部分、これは歯に相当するのだと思いますが、これをはずして塩少々でさっと生干しにして炙って食べればなかなかオツなつまみとなるでしょう。
 後の下足は吸盤のところに墨が入っていたりするのでおかめタワシなどでよく洗ってください。水分をふき取って塩か醤油で味付けをして生干しにしても良いですし、椎茸やししとうと一緒に一口大にカットしてからホイルで焼いて生姜醤油で味付けをしても美味しいものです。または、サッとゆでて酢味噌や生姜醤油、分葱や胡瓜など添えてというのも良いですし、唐揚や天ぷらなどもご馳走となって食卓を彩るでしょう。尚、揚げるときはしっかりと粉をつけないと破裂しますのでご用心、ご用心。

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 そうこうしておりますうちに2時間ほど経ちますとワタの水分が十分にぬけますのでその水を切って裏ごしにかけます。ボールに裏ごししたワタを入れ味を見てから味付けの塩をします。必ず味見をしてください。すでに良い味になっていたらあえて塩を入れなくても良いでしょう。私はここで一味唐辛子を加えます。他に柚子の皮やニンニクのすりおろし、柚子コショウなどをお好みでお試しください。

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 では、ワタに味がついたらもう一度20~30分位冷蔵庫にボールごと入れ塩味をなじませます。この間にキッチンペーパーで巻いて冷蔵しておいた身を細かく切って後はワタと和えましたらどうぞご試食ください。この時は少し塩が強いかな、位の味でちょうど良いと思います。ここで良い味だと食べ頃にはもの足りない味になっていることでしょう。また、このときに渋みが強い場合は私は醤油をほんの少し入れます。

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 あとは空き瓶か口の広くないタッパーのようなものに入れ冷蔵し、毎日一度は必ず箸でかき混ぜてください。これを怠るとすぐに酸化して生臭くなり台無しになってしまいますのでご注意ください。この一手間をかけながら1週間位毎日味見をして、何日目位が自分の好みか試しながら楽しまれると良いでしょう。
 和えたて出来たては非常に済みきった味でワタの濃厚な旨みと香りが新鮮で塩辛がダメな人でも食べられることもあります。(これは当店で相当数のお客様から喜びの声をいただいており、実証済みです。)
 2~3日経つと発酵が始まるので少し味に変化が見られます。1週間ほどすると明らかに発酵した味に変わり非常に日本酒のとの相性が良くなります。この先は上手に保存させることができると2週間位、無添加でも腐らずどんどん旨みが増していきます。
 以上のことは当店の冷蔵庫のことですので参考にしてください。冷蔵庫の設定温度や開閉頻度、入れる場所などでも微妙な差異が生じると思いますので目安としてください。
 今日ご紹介した塩辛は皮をむいてありますし、下足も加えてありませんが、少しいかの味を強く感じた方は、皮付きで身を刻んで入れ、下足も吸盤を切り取って除き、虫がいないことを確認してから刻んで入れれば歯ごたえも味も強くなるでしょう。その辺はお好みでどうぞ。ただ、その場合は上身を1枚刺身で食べる等してワタの分量が少なくならないようにされることをおすすめします。いかの身に対してワタの量が少なすぎるとサッパリしすぎてしまい旨みの乏しい塩辛になってしまいます。
 では次回のレシピをお楽しみに・・・。皆様ごきげんよう。

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